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2013.03.26

100年の時を超え

昨年にご依頼いただいた、松山市内の築100年の古民家の再生リノベーション計画が、だいぶん進んでいます。約100歳ですから、ボクの2倍以上この地で生きて来た大先輩です。

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もちろん、当時の伝統工法で建てられており、土地だけでも一反(300坪)あります。長屋門があるお屋敷で、農業が日常の生活だった頃のライフスタイルに溶け込んだ様式や間取りになっていて、今時の合板や金物、いわゆる新建材ではなく、木や土といった自然素材でできていますので、隅々まで調査するだけでも一苦労でした。大量生産しスクラップ&ビルドが主流の現代になってなお、長い年月を経て生き残ってきた古民家には、時の流れを感じさせる風合いと迫力があります。しかし、ご先祖さまが残してくれた建築様式や文化、住まいの知恵が溢れた建物ですが、現代の人間が住むのですから、すべて古いものが良いという訳ではもちろんありません。現代のスタイルにはそぐわない箇所、長い年月の間に劣化していまった箇所ももちろんたくさんあります。そうしたところを再生して美しく、居心地よく甦らせるのが目的です。

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現代の一般的な家と、戦前のいわゆる伝統構法の家とでは、地震に対する造りがまったく違っています。現行の建築基準法では、建物の耐震性は「壁の量」として評価され、積極的に耐力壁(をバランスよく設置して、金物で軸組を接合することで、建物を出来るだけ変形しないようにガチガチに固める事が目的の「剛構造」です。

これに対して古民家は、「木組み」といって、柱や梁の端を凹凸に加工して接合し、木で作った込み栓や楔という部材で押さえます。こうした木組みが何重にも重なり、全体が、地震の揺れに対して木と木とがが多少めりこみ合いながら一緒に揺れることで柔らかく地震力を受け流す「柔構造」が、古民家の考え方です。一般的に丸太などの大きな構造部材が使われていて、部材の変形による割れなどに一定の許容範囲が有るので、柱や梁、貫などの軸組み部材の接合部や土壁などの破壊や変形によって地震力を吸収する造りになっています。

伝統木造建築の「柔構造」を科学的に検証するための実験や研究が国交省主導で進められていますが、今のところ建築基準法は「剛構造」の考え方だけを採用しているのが現状です。

じゃあ壁の少ない古民家は地震に弱いのか、という議論にいつもなってしまうのですが、そういったわけでもありません。伝統的工法の耐震の考え方は意外と優秀で、日本の職人たちが連綿と伝えて来た伝統工法にはそれなりの合理性があるのです。建築を専攻するだいたいの学生が衝撃を受ける「五重の塔は何故倒れないのか?」という五重の塔の不倒神話がそれを物語っているのではないでしょうか。

ただ、いかに大きな構造部材が使われていて変形による割れなどに一定の許容範囲が有るとは言え、無理な増築が行われていたり維持管理がまずかったりすると、様々な要因によって耐震性能も左右されやすく、建物の耐震性能が低下している可能性もあります。だからこそ建物の状態を部位ごとにチェック、調査確認し、適切な方法で補強改修することが必要となってくるのです。

というわけで、おのずと今回のリノベーションのポイントは非常に盛りだくさんになってきます。建物の軽量化や防蟻対策を含む構造補強はもちろんのこと、バリアフリーを含むユニバーサルデザイン、寒さ対策もクリアーした上で、現代の生活に合うプランニングに見直すことから始めます。また、もう今となっては手に入らない高価な素材(建具や家具、厚鴨居など)が空間のあちらこちらに散りばめられていますので、それらを活かした色気のある空間をデザインしたいと考えています。

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少子高齢化に歯止めがかからない我が国ニッポン。

スクラップ&ビルドからの脱却が叫ばれて久しいというのに、有形無形の資源がいまだに凄まじい勢いで失われていくニッポン。

ロングライフを見据えたストックの時代に突入した今、エネルギーや地球環境の観点からも、リノベーションやコンバージョン等により建物を再生する事は、もはや社会的要請となりつつあります。

残していかなければいけない文化や風習は数多くあります。

まずは人間の生活の場である大切な住空間を残すことから…。

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